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写真はうちの師匠の家具修復工房です
彼の工房はイギリス中部グロスター州にあるのですが、以前はアンティークのお店も多かったところです。
現在はお店の数も減ってしまい、アンティークタウンという感じではなくなりました。
しかし、面白いことに彼の仕事場の近くには修復師の工房が増えているそうです。
そのうち3人ほどには実際に会いましたが、みんな仲良くて、仕事をめぐって競合して困るようなことはないそうです。
これは考えてみれば当たり前で、同じような仕事をしていても、それぞれ得意不得意があったりしますし、時には協力しあった方が自分も得なのです。
日本で仕事をしている自分の場合も全く同じです。同業者同士で仕事を頼んだり頼まれたりしていますし、仕事のやり方を相談したりもします。面白いことに相談しているうちに自分で最適な解決法を見つけられることも多いです。
イギリスで彼らの会話を聞いていても、おんなじだなーと思いました。現在やっている仕事の話などお互いにしていますね。
近くに知り合いの工房があるので、例えば金属部品の加工を知り合いに頼んだら、数時間後には作って持ってきてくれたなんて光景も目にしました。便利ですね。
彼の工房にいると、そんな感じで人の出入りが結構あって、合間に一緒にお茶を飲んだりしますし、却って仕事にメリハリがついて良いなと感じます。時には邪魔されたくない時もあるでしょうが、一日中一人でこもりきりでいるよりは精神的にも良いのではないでしょうか。
うちの場合は工房だけでなくお店でもあるので、その点お客さんとお話しできて良いです。たまに僕の工房の仕事を邪魔して申し訳ないと言われるお客様がいらっしゃるのですが、そんなことはありませんので、どうぞゆっくりしていってください。ただ、本当に手が離せない時はしばらくお待ちいただくこともありますのでご容赦ください。
時には師匠と一緒にお客さんの家に配達に行ったりするのですが、そんな風に海外で個人のお宅にお邪魔することはなかなかありませんので喜んでついていきます。
裕福な方も多いですし、お住いの家自体が何百年も経った古い家だったり、素晴らしいロケーションだったりします。師匠とお客さんの関係も親しい友人同士みたいな感じで、よっぽど以前からの知り合いかと思うと必ずしもそんなわけではなく、それが普通のようです。僕も会話の仲間入りしたりと自然に過ごせます。イギリス人はそういう人との距離の取り方が上手いように感じます。過剰にフレンドリーなわけではなく節度があって、ちょっと日本人の距離感と似ていますが、もっと近い感じでしょうか。人にもよりますけどね。
たまに、師匠の工房にいると、その昔一緒に働いていた頃から何十年も経っているのに、ずっとそこで一緒に過ごしてきたような錯覚に陥ります。不思議なことに彼も同じことを感じるらしく同じことをよく口にします。
そこにいると、まるでそこを離れていた間の時間はなかったかのように、時間がそのまま継続しているかのように感じてしまいます。ここにいるのが当たり前という感覚。あたかも日本とイギリスで二つの時間をパラレルに同時に過ごしているような錯覚です。一回の滞在はほんの僅かなのですが、おかしいですね。