スワロウデイル・アンティークス

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Restoration

修復 ( restoration ) とは

resto02一般に修復という言葉から連想するのは、美術館や博物館などで行われている美術品や文化財の修復のことではないでしょうか?
では、当店で行っているアンティーク家具の修復はそれらと同じものでしょうか?
実は同じ部分もありますし、違うところもあるのです。
文化財などの修復の大きな目的は保存です。
英語では conservation と言いますが、つまり残されたコンディションを現状のまま将来にわたって維持するために行われるものですね。
絵画の修復などでは、経年の汚れや劣化を取り除き、絵の具やニスを補ったりすることもあります。
こちらは、単なる現状維持だけとは言えないですね。書かれた時のオリジナルな状態を取り戻し、鑑賞するのが目的でしょう。
同じ文化財でも、建築物などでは保存が目的とは言え、現状のままでは、倒壊したり雨漏りしたりしては困りますので、部分的に新しい材料で作り直すこともあるでしょう。
修復と言っても、資料的な保存が目的だったり、より良く鑑賞できる事が目的だったり、ある程度の機能維持が目的だったりと、その役割は場合によって様々なことがわかります。

アンティーク家具の修復においても、同じように様々なケースがあります。
歴史的に貴重な家具を美術館で保存するためにする修復もありますし、作られた時の美しさを取り戻すための修復もあれば、機能を復活させる使うための修復もあります。最近では古い状態の良い家具が少なくなっていますので、ヨーロッパにおいても conservation 、つまり保存のための修復が重要になってきているようです。
しかし、本当に貴重な家具を除いて、一般的にアンティーク家具は直しながら使い続けられてきたものがほとんどです。
適切な修復をしながら使われてきた家具は、何世代にも渡って人々の暮らしのなかで大事に受け継がれてきました。
アンティーク家具はそのようにして、百年、二百年と使い続けることが可能なのです。
当店が行う修復の目的は、そのようにして使い続けていくことを可能にすることです。
もちろん、対象によって修復の仕方や度合いは様々でありますが、使いながら将来的にも維持できる状態にする事が一番の目標です。

実は、使い続けるということは保存の一番の特効薬であるとも言えます。
これは聞いた話なのですが、伝統芸能などで使われる道具は、適切に使い続けている限り直しが必要になることは少なく、色艶も落ちないどころか、より深みを増していくものなのだそうです。
ところが、貴重な品なのでということで美術館で保存されるようになると、いくら湿度や温度を慎重に管理していても、何年か経つとひび割れたり、艶がなくなったり、ひどい場合には塗装が剥落したりして修復が必要になるのだそうです。
これは、使われなくなった道具が死んでしまう典型的な例と言えます。
陶器の器なども実際に使っている方が色艶が良いですよね。
家具の場合も同じで、ワックスがけよりも何よりも、毎日使って乾拭きをするというのが一番のメンテナンスになります。
これはアンティーク家具に使われているのが、本当の天然素材であるからです。
昔、毎日拭き掃除を欠かさない家の床や柱はピカピカでしたが、これも同じ天然素材だからですね。
新建材や合板に合成樹脂の仕上げの家具や建具では、こうはなりません。
使い込むことによっていわゆる木味(パティーナ)が生まれるので、その木味、風合いこそがアンティークの大事な魅力です。
日常に使うということは、不調があった時も気が付きやすいということです。
家具の具合が悪くなってきたときに、早めに修復士のところにお持ち頂ければ、より長持ちする修復が可能です。
早めのお手当てが大事なのは人の体と一緒です。
当店では、お買い上げ頂いた以外の家具でも修復いたしますので、ご相談ください。

resto01修復も修理も似たような言葉ですが、ここでは敢えて修復という言葉を使っています。
何故でしょう?幾つかそこに込めた意味があるのですが。それは例えば
1 初めに作られた時の状態(オリジナル)をできるだけ尊重するということ
形状を変えたり、部品を付け加えることは避けます。
そのため、傷んだ部分を交換したり、仕上げを直す場合もできるだけ同じ材料を用います。
具体的には伝統的な手法で、昔ながらの材料、素材を使って作業しています。
当店の場合は、修行で身につけたイギリスの修復技法が基本になっています。
2 将来、再度修復が必要になったときのことも考えて直すということ
これはよく例えに使うのですが、古いヴァイオリンが、どうしていつまでも現役で使い続けられるのかということを考えていただくとわかりやすいかと思います。ヴァイオリンはニカワで接着されていますので、温水や蒸気を用いて材料を損なうことなく分解が可能です。再度新しいニカワで組み立て直し、昔ながらのニスで仕上げることで、本来の音を維持したり再現することが可能なのです。
家具の場合も構造部分はニカワで組み直します。木にダメージを与えずに分解することが難しい接着剤を避け、バランスが悪い部分的な補強などもなるべく避けます。
よく見かけられる修理で最悪なのが、細い釘を何本も打ち込んで止めてあるケースです。
釘のせいで木材がボロボロになっているケースが多く、またダメージを与えずに釘を取り除くのも大変です。
割れた部分が接着できればまだ良いのですが、最悪の場合は部分的に作り直しになってしまうこともあります。
こうしたことを避けるためにも、一時しのぎの修理を避け、根本的な手当てをすることが大事です。
椅子などの場合ですと、全体を一度分解して再度組み直すという方法をとることが多く、大変手間がかかりますが、将来のことを考えますとそれがベストの方法です。
修理というとどうしても一時しのぎのイメージが強く、例えば釘やネジでグラを止めるという修理を連想してしまいます。
1と2は重複する部分もありますが、このような意味合いから家具の直しを修復(レストア・レストレーション)と呼びたいと思います。
リペアという言い方も、どちらかというと修理的な意味合いを感じますので避けたいところです。

なぜうちのお店は手間をかけて直しながら売っているのでしょうか?
最初からコンディションの良いものを仕入れれば良いではないか?
などと思われる方がいらっしゃるかもしれません。
「理由は家具修復が好きだからです」
というのは、まあ、嘘ではないのですが他にも理由があります。
当たり前のことですが最初からコンディションの良いものは高価です。
現地の仕入れ値もそれなりにしますので、おいそれと手が出ません。
また、当店が力を入れているような古い地方の家具などは現地でも高価なものですし、物自体が希少です。
オークションなどで入手した物を、手間をかけて修復していることも多く、当然その費用は値段に反映します。
そこで少しでもリーズナブルにご提供できるように、長年の仕入れの経験とネットワークを活かして、現地の流通のなかでもなるべく源流に近いところから仕入れるようにしています。
源流というのは、業者間やオークションで売買される以前のなるべく早い段階ということです。
こういう段階で見つかる家具ですと、倉庫などに放置されていた状態からいきなり引っ張り出されてきたようなものも多く、当然修復が必要となるわけです。
その修復を、日本に到着してから当店で行うことで、少しでも安くご提供が可能になること、理想的な修復が行いやすいこと(中途半端に修理されているよりは、少しくらいダメージがあっても、ありのままの方が修復しやすい)というメリットが生まれるわけです。

resto03理想的には全く修復の手を入れずに済むのが理想なのはいうまでもありません。
ですから必要があって修復する場合でも、なるべく最小限にするように心がけています。
修復のやり過ぎは、アンティークを台無しにしてしまいます。
機能面の修復はまだわかりやすいのですが、難しいのは仕上げの状態です。
仕上げをきれいにする場合でも新品のようにしてしまっては意味がありません。
目指しますのは「使い続けるということ」の項目で書いたような、使い込んで味の出た状態の維持。もしくは、その状態を再現すること。
お客様のお手元に届いてからも、どんどん使い込んでいただいて、さらに木味を育てていただく楽しみを感じていただく、そんな修復を目指しています。
長々と書きましたが、わかりにくい点も多々あると思います。ご不明の点はお気軽にお問い合わせください。