スワロウデイル・アンティークス

アンティーク家具、古道具全般、家具修復のスペシャリスト。お問い合わせはお気軽に

Blog

イギリスの家の謎

投稿日:2017年2月26日

これから書くことは、とっくにご存知の方がいらっしゃる事と思います。

自分は知らなかったので面白いと思いまして、書いてみようと思いました。

それはロンドンなどの典型的なイギリスの家にある地下室のことです。

写真はフリー素材なのでイマイチなのですが、よく見かける都市部の住宅らしいですよね。

ちょっと階段を上がって玄関があり、ドライエリアのある半地下が見えます。

僕が不思議に思っていたのは、こういった家の裏側が一段低くなっていて地下レベルと同じ高さに庭があったり、ガレージがあることでした。つまり、建物の表側と裏側でグランドレベルが違うことが多いのです。

実際、イギリスの友人の家も一階の部屋から階段を降りて裏庭のスペースに出るようになっており、その先にガレージがありました。

また、彼が仕事場に使っている別の建物の入り口は、表通りと同じ高さで階段はないのですが、やはり裏庭に出ると階段を降りた先にガレージがあり、そこは裏の道路と同じ高さなのでした。また、この建物にも地下室がありました。半地下ではなく完全に地下ですがおそらく裏の道と同じグランドレベルでしょう。

不思議に思っていろいろ調べたら、どうやら正解がわかりました

その昔、地下室は暖房用のボイラー室などに使われていたらしいのです。ボイラーには燃料のコークスや石炭が必要ですが、各家の前の道にマンホールがあり、そこからスロープで地下室に流し込めるようになっていたのだそうです。配達の便宜のために高低差を利用する仕掛けになっていたのですね。あるいは写真のように直接地下に降りる階段がある場合もあるので、家の中を通らずに地下室に石炭を届けるという理由もあったかもですね。

これで地下室がある理由はわかるのですが、家の裏と表で高低差があるのはなぜでしょうか?

実はここで地下室と言っている部分は、地下ではなく元々のグランドレベルつまり本来の地面の高さなのだそうです。驚くべきことに街づくりの時に表通りを盛り土して高くしているのですね。掘り下げて地下室を作るのではなく道路の方を盛り上げていたという訳です。当時のイギリスがいかに裕福だったか、公共事業に潤沢な資金があったということがわかりますね。統一感のある町並みは、そのように出来上がったものなのでしょう。

家の裏側が本来の地面の高さということになりますので、地下室の排水や湿気の問題もあまりないのでしょう。

現代では大掛かりなボイラー室は必要ないですが、地下室は居心地の良い空間として利用されています。僕も友人の家に泊まる時はいつも地下室を使わせてもらっていましたが、外部と遮断された静かで広々とした部屋は実に快適でした。でしたというのは、実は友人はもっとモダンで広い家が良いと言って新しい家に引っ越してしまいました。どっちが好きと聞かれて古い方が良かったと言うとちょっとがっかりした顔をしていましたが。

ところでイギリスの建物は日本で言う二階をfirst floorつまり一階と呼び、通常の一階をGround floorと言いますよね。

これも同じ理由かもしれませんね。通常、玄関のあるfirst floorは地面レベルからすれば二階になりますので、地下室があろうがなかろうが地面レベルにある階はGround floor と呼び、その上から一階二階と数えるようになったのではないでしょうか。これはきちんと調べていないのですが、どうもそんな気がします。

皆さんはご存知でしたか?僕は全然知らなかったです。イギリス風の家に憧れがあり、その独特の構造は日本でも作ることは可能なのかなと疑問に思って調べていたところ、やっとわかりました。これを日本で実現するのは難しそうですね。