スワロウデイル・アンティークス

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 from workshop 可哀想な椅子

投稿日:2015年10月17日

先日修復に持ち込まれたウィンザーチェアにはびっくりしました

何がと言ってその古い修理跡のひどさにです

何年か前にお客様が電話帳で調べて見つけた、椅子修理専門のプロという人に頼んだという話なんですが、、、

脚が抜けてしまうということでしたが、まず一見して気がついたのはプロポーションの狂い

使っているうちに狂ってしまったのかなと思ったのですが、修正しようとしても狂いが治らない

よく調べたところ、ジョイントを正しい向きで差し込まず、適当に突っ込んでいるので脚の角度やら何やらが出鱈目なのだとわかりました。

丸ほぞは角度を見ながら組まないと、おかしなことになります

おまけに、狂った角度のせいで入らなくなったところを削って無理やり突っ込んだり、機械打ちの釘を打ち込んで木割れを起こしたりと、もう修理というよりは破壊と言っても良い状態です。

そしてはみ出しまくった大量の接着剤の跡

技術的な稚拙さという点でも、仕事として人様にお金をいただくレベルではないのは明らかですが、僕が何より腹立たしく思うのは家具に対するリスペクトがまるで感じられないという事です。自分の仕事に対するプライドもまるで無い。

おそらく、その人は椅子の張り替えなどを専門にしている人だったのでしょう。残されたステープルから推測してもそんな感じです。

毎日数多くの仕事をこなさなくてはならず、とても余裕の無い状態だったのでしょうか

そんな時に、治すのが厄介な一品ものの古い椅子なんか持ち込みやがってと思ったでしょうか

しかし、その投げやりな修理のおかげで、およそ150年前の椅子が台無しになってしまったのです

おそらくその職人にとっては、椅子はただの飯の種で、仕事に愛着もなかったのかなと思います

最近いろんなところで、データ偽装やら何やら聞くので、日本人はどうかしてしまったのかと思っていましたが、どんなことでも、一つごまかし出すと延々と偽り続けなくてはならなくなるものです。

そんなほころびが目立つようになってきたということなんでしょうか

手仕事も一度ごまかし仕事をしてしまうと、ついつい繰り返すようになってしまうと思います

自分なんて別に正直者というわけではないですが、ごまかすのも下手だし、嘘をつき続けるのが面倒くさいと思うたちなので、なるべくごまかしは無しでという方向でやっていこうと思いますね。

実はいい加減な直しの跡を見るのは良くあることなのですが、今回はあまりにも酷かったのでついつい愚痴ってしまいました。

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