スワロウデイル・アンティークス

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 new item イーストサセックスの椅子

投稿日:2016年5月6日

"Beckley" chair

ギャラリーにラッシュ座面の椅子を一枚追加しました。
この椅子の詳細は、ひょんなことから判明しました

仕入れた時から可愛い椅子だなとは思っていたのですが、自分の知識にあるイギリスの典型的なカントリーチェアの類型に当てはまらなかったので、どういうものかなと思っていました。

イギリスの椅子は地方によって特徴がはっきりしているものが多いので面白いのですよね。
ただ、これに関しては、椅子の専門書にあたっても同じようなものが見当たらず、ボビン加工の背もたれの感じからサセックス地方あたりかなと漠然と思っていたぐらいです。

ところが先日、お客様と色々とりとめもなくアンティークのお話をしながら、パラパラと本をめくっていましたら、まさにこの椅子とまったく同じ写真を見つけてしまいました。それによりますと、背もたれのボール状の加工と、前脚の竹を模した加工などが非常に特徴的で、イーストサセックス地方のBeckley村のものであるとして2枚の写真があげられていました。

その2枚のうち1枚のものが、細部に至るまでまったく同じデザインでした。
ちなみに、もう一枚は背もたれトップが板状ではなく下と同じボビン加工です。年代はどちらも同じで1820年から50年ごろとのことです。

その本は椅子の専門書ではなく、イギリスのカントリー家具全般の本でしたので見落としていたのだと思います。
確認のために他の資料も探し、ネット検索もしたのですが、その本以外には資料が見つかりませんでした。
アンティークの資料としては権威ある出版元ですので、まず間違いはないでしょう。

Beckley村というのはアンティークタウンとして今でも有名なRyeと同じ行政区のようです。
もともと製鉄が大変盛んだったようで、16世紀から18世紀にかけては大砲や銃など重要な武器製造の拠点でもあったようです。
おそらくその後はさびれて人口流出や海外移住なども行われたようですが、かつては多く人も集まる活気のある村だったのでしょうか。

いろいろ調べてわかったのは、そんなところなのですが、イギリスの地方の村の歴史背景が一つの椅子から見えてくるというのが、いつもながら面白いですね。以前も羊毛産業の興隆と椅子のデザインの関係についてわかったりということがあったりしました。

この椅子に関する詳細はこちらのリンクからギャラリーをご覧ください。

参考資料  ENGLISH COUNTRY FURNITURE 1500-1900, David Knell , Antique Collectors’ Club 1992 , 図版472

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