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こんな風に座面を張りますという張りかけの状態をお見せするために準備した椅子なのですが、そのまま展示中です。
きっちり張り直すためには座面のベースを少々直さないといけないという事もあります。
ラッシュの張替えも自分のところの商品だけやっていましたが、少量でしたらお客様の持ち込みでも対応できますのでご相談ください。
使う材料は生のラッシュではなく、ツイステッドと言いまして、あらかじめ撚り合わせて製品化したものをイギリスから仕入れて使っています。
ですので、表面は通常の見た目と変わりありませんが、裏側は違って見えます。
と言いますのは、通常撚りをかけながら編む場合には裏面は捻らずストレートに持っていくやり方をするものなので見た目が少々異なります。
その他にもラッシュの太さとか細かいテクニックの違いがありまして、完全に同じようにはできませんので、ご承知ください。
この椅子は以前にもご紹介していてギャラリーにも載せてあります。(ギャラリーのページはこちらです)
インスタグラムのコメント中にありますように、作られた村まで資料に載っていたという珍しい椅子です。
資料の名前をもう一度ここに書きますと。
Antique Collectors’ Club刊行 David Knell著 ’ENGLISH COUNTRY FURNITURE 1500-1900′
関連ページは305ページにあります
Antique Collectors’ Club の本はどれも重要な本が多く、うちにも何冊かあって常に参照しています
いつかゆっくり通読したいのですが、なかなか難しいですね。
今回は修復中の椅子を色々な角度から見ていただこうという趣向です
すでにInstagram等で断片的にお見せしている写真もありますが、ここでまとめて詳しくご紹介します
上の写真が修復に取り掛かる前の状態です
座面は布張りになっていたのですが、座を支える骨組みが折れてしまったり釘でボロボロになっています
よく見ると、元の座面はラッシュというイグサの一種で編まれていたものであることがわかります
こういったカントリーチェアはラッシュ編みが普通で、骨組みにもその痕跡が残っています
過去のいずれかの時点で布張りにしてしまったのですね。
分解中に普段は見ない角度で椅子の前部を裏から見ています
面白いのが下側の横木(ストレッチャー)が部分的に平らになっているところです
これは後から欠け落ちたのではなく、最初から太さ(直径)が足りない木を使ってロクロ挽きしているのですね
普段目につかないところなので、材料を節約したのでしょう
こういう割り切りは結構目にします
ロッキングチェアのソリの部分を外すためにひっくり返しているところです
この角度もあまり見ることはないと思います
なんか独特の、生き物のような存在感があります
長年の使用で木目が浮き上がっています
これも椅子の背もたれを後ろから撮ったもの
板の表面の凹凸がわかるように光の当て方を工夫してみました
一様に平らな面ではないことが見えます
機械製材ではなく、割り木などによる素朴な手作業で板にしたように思えます
ここでも裏側の下の方などは材料が足りない部分がありますね
裏だからいいのです(笑)
修復中の一コマ
分解して座面を支える骨組みを作り直しています
このように目に触れない部材はさらに大雑把に割っただけの木が使われています。
そこで新たに作り直す際もナタや斧を使ってざっくりと整形していきます。
座面を編んでしまえば見えなくなってしまうので、そこまでこだわる必要は本当はないのですが、なんかそうしないと気持ちが悪いのです。
汚れをテレピンで洗い、ビーズワックスで仕上げました
ニスやステインなどは使いません
最後にラッシュで座を編み上げます
本当は刈り取ったラッシュを何本か縒り合わせながら編んでいくのですが、さすがに国内で適当な材料が入手できないので、イギリスから持ってきた既に縒ってロールにしたものを使います。座面の見た目は変わりありません。
今回はちょっと違った視点から椅子の修復を取り上げてみました
いかがでしたでしょうか
ギャラリーにアップしていたと思っていたら漏れていました
ラッシュの座面がかなり弱っていて切れそうだったので編み直したものです
これは、張り替える前に古いラッシュ(い草の一種です)を取り除いて、緩んだジョイントなどを修復した状態の時に撮ったもの
編み直しは結構時間がかかります、作業としては単純なのですが力加減にコツがあります
詳細データや写真などはこちらのギャラリーをご覧ください